2009年06月09日

紀伊長島の長い夜



三重県紀伊長島への出張。
初日の打ち合わせを終えて宿泊先へ。
毎回2〜3カ所の民宿をローテーションでお取りいただいています。

先週から出張続きで、しかも今回かなりアイディア出しを行ったので
疲れていました。
お風呂をいただいてから食事をしました。
少し早かったのですが、食後寝ることにしました。

ところが。

1時を回ったあたりでなかなか寝付けないでいると、
突然耳のそばで「ふぃ〜ん」という羽音が!

蚊です。

6月上旬でかよ!
と思ったのですが、明らかに「ふぃ〜ん」と音がしました。
そうなるともういてもたってもいられなくなります。

デンキを全開(全部点けるの意味)にして臨戦態勢。

作戦はこうです。
ふとんの白を背景にするように体をかがめながら視線を落とします。
そして黒い影を察知したらすかさず手を出す!
ふとんの先を凝視した眼光は、さしずめ獲物を狙う野獣のごとし。

「そこだ!」

黒の影を察知するやいなや、わたしの左手が伸びて、その影を捕らえました。
「ヒット!」
いや、別にそう叫んだ訳ではありませんが、
わたしの左手の薬指と中指の間には確実にその黒い影の残骸が
潰れていました。

終わった。

紀伊長島の夜に、再び静寂が戻ったのだ。
戦士は任務を終えると、デンキをすべて消し、疲れた体を横たえました。

が、やつは1匹ではなかったのです。

「ふぃ〜ん」

第2波がおそってきました。

「すわ!伏兵がいたか!」

再び臨戦態勢に戻る。

また先ほどのクラウチングスタイル。
目は、上、下、右、左と黒い影を捜しています。

しかし、2匹目はなかなか現れません。
どうする、このままあきらめるか?
一旦は休戦、ということで布団に仰向けになりました。
しかし、デンキはつけたまま。
目は相変わらずやつを捜しています。

携帯でニュースをみたり、ゲームをしながらやつの影を待ちました。
「ふぃ〜ん」
裏をかかれた!
いきなり耳の側まで来ていたのです。

もうだめだ。

こうなったら徹底抗戦。
やつをたたきつぶすまでは寝ない、と誓う。

この時点ですでに夜中の3時半。

明日は7時半には起きなければならない。
「あと30分でけりをつけて、3時間の睡眠時間を確保する」
という作戦に出ました。

クラウチングスタイルでじっと影を待ちます。

「右!」

わたしの右手が畳をたたきました。

「ロスト!」

なんと指の間をすりぬけてしまったのです。

千載一遇のチャンスを逃したあとは、膠着状態が続きました。

時間はもうすぐ4時半。

もうあきらめようか、そう思ったとき!
センター!

わたしの両手が空中で「パンッ!」と音を立てました。

やりました。

わたしの左手の中央でやつは潰れていました。

「これで終わったのだ。なにもかも。」

5時になろうかとしている民宿の部屋では、
せめて2時間は寝ようと、布団にくるまっているわたしの姿がありました。

さあ、寝るがいい。
戦いは終わったのだ。

「ふぃ〜ん」

3たび聞こえた蚊の羽音。

「3匹だったのか〜(ToT)」

3度クラウチングスタイルをとろうとしたのですが、すでに疲労困憊。

「もういい。おまえは十分頑張った。2匹もつぶしたじゃないか。
あとは、血の少しぐらいくれてやれよ。それより寝よう。」

誰に言うとも無く、言い訳をつぶやき、わたしは横になった。
すべてをあきらめて。

しかし、羽音が聞こえてきました。

「もうムリだ」
わたしは、暑さもかまわず、布団を頭からかぶり、時の過ぎるのを待つことにしました。
しかし、6月9日、布団の中は暑い。
汗だくになり、思わず布団を剥ぐ。

「引くも地獄、進むも地獄。ならば潔く進もうではないか!
逃げの人生はもうやめだ!攻めるのみ!」

再び戦闘態勢に。

しばらくすると、右側の壁にやつがふらふら現れたのです。

木製の壁を叩けば、やつは潰せる。
でも、それをやったらものすごい音が響き渡る可能性がある。
「だめだ、ここで躊躇しては!」

「ダンッ」

こうして爆音とともに3匹目を撃沈させたのでした。

時間は5時50分。

こうして水上と蚊との壮絶な戦いは本当に終わりを告げました。

「さあ、寝よう。1時間ちょっとは寝られる」

目を閉じた瞬間、

「キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン〜♪」

朝6時を告げるチャイムが町中に響き渡ったのでした。

さらに。

朝の6時半過ぎに、民宿のすぐ近くを一番列車が猛烈な音をたてて
通り過ぎていきました。

わたしは、眠ることをあきらめ、
パソコンを取り出して、仕事に没頭することにしました。

あの3回の戦いは何だったのだろうか・・・

戦いのあとは、いつもむなしさだけが漂うのだろうか。

(完)

pfactory at 15:02│Comments(0)TrackBack(0) 「教わる技術」関 

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